#author("2025-04-06T17:01:49+09:00","","") #author("2025-04-06T17:04:10+09:00","","") [[新・賭博師たちの夜]] *種売り姐さん [#u94aec7f] 世の中には、一見、親切と見える行為もある種の人にとっては、殺人行為の隠れ蓑にしている場合もある #ref(s.jpg) #br 不幸の種売り&ruby(あね){姐};さん 近所の誰かが死ぬと、触れ回り香典集め、老人、隣人から2000円、3000円と巻き上げてゆく 自分の畑でなすや菊屋キャベツの苗が余ると近所に持ってくる 足腰が悪い老婆の家にも持参 老婆の同居人は、畑で倒れては辞退するが 老婆は近所付き合いで貰ってしまう もう、畑が出来ないことをわかっているはずなのに あの隣のばあさんは必ず、苗を持って行くとお礼を言って、必ず、せっかくだからと畑に植えるんだっちゃ もしも、この世に神がいて慈悲深い性格だとしたら、病人に種とか苗を与えればどうなるかは承知だろうに 案の定、老人はある日、転倒、大腿部骨折し姐さんの思惑通り、二度とこの世をあるけなくなってしまった 姐さんは、念を押すように、菊を植えろと老婆の元へ届けた クーラーを三台もつけてんだっちゃ、あのばあさんの家は、と日頃から妬んでいたのである 子供がうちらと違って三人とも大学やったから、きっと実家におくってくるんだっちゃ 片や、親切姐さんも痴呆症、脳がやられ誰も相手にしない この地に出来た競輪場の視察に来ていた新任の遠藤検察官は、&ruby(じょう){場};で、自分の連れ添いが殺されたと訴える、老婆の亭主、に行き会った 姐さんを捕まえられませんか?! 隣の姐さんを捕まえられんもんらかや?! 遠藤検察官は、ドイツ刑法では、逮捕出来ます・・・ しかし、それは言わなかった